建物の耐震安全性の向上のためには、地震動の特性と地震時の建物の挙動を理解する必要があります。建築研究所(BRI)は実際の地震時の建物の挙動を調査するために、強震観測と関連する研究を行っています。

建築研究所は全国の主要な都市の建物に強震計を設置しています。現在、下図に示すように80以上の観測地点が稼動しています。観測地点のうち約1/3が東京を中心とする関東地域にあります。全ての観測地点にはデジタル式の高性能な強震計が設置され、ほとんどの地点が記録の迅速な回収や保守作業のため、電話回線で建築研究所と結ばれています。建物の動的な挙動の解明が観測の目的であり、基本的にセンサーが建物の頂部と基礎に設置しています。また、地盤と建物の相互作用を知るため、近傍の地盤にもセンサーが置かれる場合があります。

Strong motion stations

図1. 建築研究所の強震観測網

建築研究所の強震観測網はこれまでに多くの貴重な強震記録を採取してきました。この中には、1964年新潟地震の川岸町アパートの記録や、1978年宮城県沖地震の東北大の記録など、歴史的な記録が含まれています。新潟地震の記録は、被害地震の強震記録としては日本で最初のものと言えます。また宮城県沖地震の東北大の記録は、建物の9階で1Gを超える加速度が得られ、建物の耐震設計法を検証する上で貴重なものでした。その後も1993年釧路沖地震の釧路地方気象台の記録、1994年三陸はるか沖地震の八戸市庁舎の記録など確実に成果を挙げています。